評価面談や1on1を行う際に、自己評価が高すぎ、客観的な評価と自己評価にかなりギャップのあるメンバーに対して、「どう伝えたらいいのか」と悩まれることはありませんか?
あなたが伝えた評価やフィードバックに対して、言葉では「分かりました」と言っていても、内心は納得していない様子であったり、「何でですか!自分はこれだけやってます!この評価はおかしいです」と、平行線のまま終わってしまうこともあり、伝え方が難しいですね。
この記事では、自己評価が高すぎるメンバーとの面談に役立つスキルを一つご紹介します。
ほんの数分で簡単に実践でき、忙しい業務の中でも活用しやすいスキルとなっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
メンバーとの相互理解を図り、お互いに気持ちよく仕事を進めていくためにご活用いただけましたら幸いです。
目次
自己評価が高すぎるメンバーとの面談では、自分だけではなく、他者も含めた評価をしてもらうと効果的です。
具体的には、チーム全体の業績に対して、自分も含めたチームメンバー全員がそれぞれどれだけ貢献したと思うか、円グラフに合計が100%となるように評価してもらいます。
例えば、図に示すように、Aさんが目標を十分にクリアして「かなりできた」と自信を持っていても、他のメンバーが同様、もしくはそれ以上に目標を達成していた場合、チーム全体に対する自分の貢献度は相対的に低くなります。
もしこの図に示すように、チームメンバー全員が目標を大幅にクリアしていたら、夢のような実績です。当然、業績も良く、一人一人の賞与にも反映できるでしょう。
(もし反映できないとしたら、そもそもの目標設定の仕方や、どれだけ頑張っても売り上げや利益が上がらないという収益構造に問題があります。)
この例の場合なら、Aさんの収入も上がっているはずです。あなたはAさんの頑張りや実績はしっかり評価していると思うかもしれません。
しかし、それだけでは人間は満足しないのです。
これに関しては、面白い心理学の実験がありますので、次の節で見ていきましょう。
この2つの状況があったとき、どちらが嬉しいでしょうか?
スクロールを止めて、ぜひ考えてみてください。
この2択では「Bの方が嬉しい」という人が圧倒的に多くなります。
あなたはいかがでしたか?
しかし、この結果はよく考えたら不思議だと思いませんか?
もし、「他の人がいくらもらうか」という情報がなく、
という2択であったなら、ほぼ全員が「Aが嬉しい」と答えます。当たり前すぎて、「何か裏があるのでは?」と感じてしまうくらい当たり前の質問かもしれません。
どちらの方が自分にとって得かだけで考えれば、Aの方が嬉しいはずです。しかし、他の人の情報が入ってきた途端に感じ方が変わります。
自分は20万円もらって喜んでいても、他の人がみんな30万円もらっている中での20万円だと知ったとたんに、しょぼく感じてしまうこともあるでしょう。
逆に15万円もらって「まぁ、こんなものか」と受け止めていたのが、他の人は10万円しかもらっていないという状況での15万円だと知ったとたんに、「うわ!こんなもらっちゃっていいの?」と、たくさんもらえた気がして、嬉しくなることもあります。
つまり、人間は全く客観的とか合理的な生き物ではありません。
こんなふうに他人との比較で感じ方の物差しがいとも簡単に変わってしまうのです。
さらにこれは、身近な人との比較の時だけによく起こる現象です。
例えば、大谷翔平選手が10年で1015億円もらうと聞いても、「わー、すごいですね」と思うだけで、自分と比較して「悔しい!納得できない!」と感情が激しく動く方はそれほど多くありません。
このように自分と距離が遠い人との1015億円の違いには何とも思わないのに、身近な人との5万円の違いにはめちゃくちゃムカついたりするのです。
こういった特性があるからボーナスの査定や人事評価は難しいのです。
自己評価が高すぎて客観的に見られない方は、視野が狭くて他の人の貢献というところがあまり考えられず、「自分はこれだけ頑張ってる。目標達成しているじゃないか」というところだけにフォーカスしていることが多いものです。
そのような方に対しては「今期のうちの部署の業績に、それぞれのチームメンバーがどれだけ貢献したと思うか」円グラフの中にみんなの貢献が合わせて100%になるように自分で書いてもらってください。
あなたがこのような円グラフをつくって示すのではなく、そのメンバー自身に考えてもらうことが大切です。
自分で考えてもらうと、どれだけ自分の実績に自信を持っている人でも、これだけ他の人も目標達成しているという状況であれば、「自分の貢献だけが8割です。他のみんなはショボイです」のように書く人は少ないはずです。
円グラフを埋めていく過程で、「自分としてはすごく頑張ったけど、Bさん、Cさんの方が実際には実績を上げてるし、Dさんも新入社員なりにすごくよく頑張って目標を大幅にクリアしてるし、まあ自分の貢献度はこんなもんかな。Cさん、Dさんの方が評価されてて当然だな」のように視野を広げて、客観視することができ、納得できる方が多いです。
このように自分で可視化してもらう作業を通じて、ほんの数分で客観視の度合いや感じ方は変わりますので、ぜひご活用いただければ幸いです。
また、それぞれの実績が、営業パーソンの受注額のような、数字で見える実績なら分かりやすいですが、バックオフィス業務や、同じ部署でも一人一人がかなり違う別々の業務をそれぞれに担当していて、実績が数字では表しにくい業務内容の場合には、より一層、他の人の貢献を客観的に認識するのは難しくなります。
そもそも他の人の業務内容やその難易度が分かっていなければ、客観的には見られませんので、面談時の伝え方だけではなく、普段からお互いの業務を知り合える機会を作るなどの工夫が必要です。
また、円グラフを書いてもらった時に、「自分の貢献度が8割である」のように、実際よりかなり過剰に見積もってしまうメンバーがいたら、物事の認識のし方に相当の歪みがあることが分かります。
そのような方は、おそらく評価だけの問題ではなく、普段から他の人の仕事内容や貢献をちゃんと理解できておらず、仕事上でも問題が起こっていたり、コミュニケーションや対人関係上の問題もあるのではないでしょうか。
この場合は、認識不足・情報不足も考えられますので、この方が見えていないところを情報としてしっかり伝えるところから取り組んでいく必要があるでしょう。
いずれにせよ、こうして円グラフを自分で書いていただくことにより、どこまでご自身で客観視ができる方なのかということもよく見えてきます。
その度合いによって面談の進め方やコミュニケーションを変えることで、より効果的に成長支援を行うことができます。
常光瑞穂
人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。臨床心理士。
京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。