「自信をつけるためには成功体験が必要だ」とよく言われます。

しかし実は、これは半分正解で、半分間違いです。

成功体験を積むことが自信を高めるために有効な場合もありますが、成功体験さえあれば自信が持てるわけではありません。むしろ、成功にこだわりすぎることでプレッシャーを感じ、逆にうまくいかなくなり、自信を失ってしまうこともあります。

この記事では、成功体験が自信につながる場合と逆効果になる場合の違い、どのように自信を育むことができるのかについて、具体的な方法と注意点を解説します。

もっと自信を持ちたい方はもちろん、管理職としてチームメンバーに自信を持ってほしいとお考えの方にも役立つ内容です。ぜひ最後までお読みください。

動画でのご視聴はこちらから

自己肯定感と自己効力感の違い

なぜ成功体験が自信につながる場合と逆効果になる場合があるのか。

それは、一口に「自信」と言っても、様々な種類があるからです。

その一つが自己肯定感です。これは、ありのままの自分を認識し、事実として受け入れる「ありのままの自分でいい」という感覚です。自分の好ましい点や長所を認識することはもちろん、ネガティブな点や短所も含めて、ありのままに受け入れることを指します。

もう一つは、自己効力感です。これは、「自分にはこれができる」、「自分ならできそうだ」という感覚です。

この2つはともに「自信」と言われることがあるため混同されがちですが、全く異なる概念です。まずはこの2つを混同せず、しっかり区別して捉えてください。

「自己肯定感」と「自己効力感」の高め方の違い

自己肯定感と自己効力感は全く異なる概念であるため、高め方も異なります。

自己肯定感は、自分を客観的に観察し、「こういう面も自分にはあるんだな」と気づき、それをありのままに認識し、受け入れることで高まります。

自己効力感は、成功体験や他者の成功にふれる代理体験によって高めることができます。

さらに、これらを高める順番が非常に重要です。まず自己肯定感を高め、それから自己効力感を高めるという順番が必要であり、逆はありませんので注意しましょう。

「自己肯定感」と「自己効力感」の関係

自己肯定感と自己効力感の関係を木に例えると、

  • 自己肯定感=根や幹
  • 自己効力感=枝や葉

にあたります。

しっかりと根を張り、太い幹が育つことで、たくさんの枝や葉を茂らせることができます。

つまり、健全な成長のためには、成功体験を積んで自己効力感を高める前に、成功するしないに関わらずありのままの自分を受け入れる自己肯定感という土台が必要です。

自己肯定感の低さは成功体験では補えない

自己肯定感と自己効力感を混同していると、自己肯定感の低さを成功体験で補おうとしてしまうことがあります。

これは今のありのままの自分を受け入れられず、成功や他者より優れた成果を出すことで「自分は自分でいい」と感じられるようになりたいという状態です。

しかしこれは、根が張らず、幹も細い木に、無理やり枝葉をたくさん生い茂らそうとするような状態です。

このやり方では、一時的、表面的にはうまくいっているように見えることもあります。

しかし、やがて重みに耐えかねて細い幹が折れてしまうか、短期的な成果に終わってしまい、持続的な成長は望めません。

生い茂った枝葉だけしか見えない周囲からは「すごいですね」「順調ですね」と言われるかもしれませんが、細い幹や根はやっとのことで立っているような不安定な状態です。

ですから、内心では「成功し続けなければ自分には価値がない」「いつかメッキがはがれてしまう」と考え、強い焦りやプレッシャーを感じたり、自己否定感にさいなまれることもあります。

そのような不安定な気持ちを安定させるために、次の成果を常に追い求め、成功し続けようとする、成果や成功に依存した不健全な状態になります。

このような状態で頑張っても、メンタルヘルスが悪化するばかりで長期的にはうまくいかないでしょう。

健全な自信を持つための4つのステップ

成功体験を自信につなげ、持続的に成長するためには次の4つのステップで考えて下さい。

  1. 自己肯定感と自己効力感をしっかり区別する
  2. まずは自己肯定感を高める。具体的にはネガティブな点や短所、失敗も含めて「ありのままの自分でいい」と受け入れる。
  3. 「失敗してもいい」と安心感を持ったうえでチャレンジする。うまくいけば成功体験となり、うまくいかなくても、その体験から自分の強み・弱みが分かるので自己認識力が高まり、その分野での知識・経験が得られ、スキルが向上し、次の成功体験につながる。
  4. 成功体験により自己効力感が高まる。

また、チャレンジする人の周りには、同じようにチャレンジする人が集まります。

すると、周囲の人の成功体験にふれて「すごいな!自分もやればできる!」と、代理体験によって自己効力感を高める機会も多くなります。

代理体験から自己効力感を高めるためにも、自己肯定感が必要です。

自己肯定感が低い状態で周りの人の成功を見ても、自己効力感よりも焦りが強くなります。「あの人はすごい!それに比べて自分は劣っている…頑張らないと…」と気持ちばかり焦って精神的にも苦しいですし、そのような精神状態では成果を出すことも難しくなります。

ですから、上記の4つのステップで、自己肯定感➡自己効力感の順に高めていきましょう。

しっかり根を張り、太い幹を育て、枝葉が生い茂る健全な成長をすることができれば、無理なく持続的に成果を出すことができ、ますます自己肯定感、自己効力感が高まる好循環になります。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

常光瑞穂

人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。臨床心理士。

京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。

自己肯定感を高める方法については、別の記事でも解説しております。ぜひあわせてご参考になさってみて下さい。

弊社では、ビジネスパーソンが幸せに成果を出すために役立つ「幸せビジネス心理学®」のコンテンツを企業研修・個人コンサルにてご提供しております。

自己肯定について学べるコンテンツはこちら