今回のテーマは、「完璧主義を活かして成果を出すポイント」です。

完璧主義をやめたい、治したいとお悩みの方は多いものです。Google検索で「完璧主義」と入れてみると、「短所」「しんどい」「治し方」といった候補が出てきます。

完璧主義でしんどい、治したい、治さなければとお考えの方が多いということでしょう。

しかし、完璧主義はマイナス要素ばかりではありません。

完璧主義な方には、常に完璧を目指して努力する、細部にこだわり追求するという特徴があります。

ですから、高い精度を求められる仕事や、何かを極めたり追求したりするクリエイティブなお仕事には向いています。

本記事では、「完璧主義」を強みとして活かし、成果を出すためのポイントについて解説します。

完璧主義を辞めたい、しんどい、治したいとお悩みの方のご参考になれば幸いです。

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完璧主義の強みと弱み

完璧主義な人は、常に完璧であることを目指そうとします。

万全を期すために努力し、高い目標を設定し、自分に厳しく理想を追い求めます。

完璧主義ではない人から見たら、「そこまでしなくてもいいのでは?」と思うようなことでも、95点では満足せず、100点を目指します。

そしてそれを、無理にイヤイヤやっているわけではなく、そのように自分なりの理想を追い求めることが好きで楽しいのです。

この特徴がうまくハマれば、高い精度を求められる仕事や、何かを極めたり追求したりするクリエイティブな仕事で力を発揮できます。

他方、このような特徴が裏目に出てしまうこともあります。

自分が納得できる状態にまで仕上げることにこだわりすぎて、ほどほどの状態でアウトプットできないと、仕事が遅く、必要ない部分に過剰に時間やエネルギーをかけすぎて、生産性が低くなります。

「完璧にできるまで人には見せたくない」「完璧にできるまでやりたくない」という想いで先延ばししてしまい、その結果、経験や練習を積むことができず、結果的にスキルや知識が身につかないこともあります。

完璧を目指そうとする想いが、かえって完璧からほど遠い状態を生んでしまうという何とも皮肉なパターンです。

さらに、客観的には十分にうまくいっている状態でも、自分の中の完璧な理想と比べてしまい、いつまでも自分に自信が持てないこともあります。その結果、不安や焦りを感じやすく、必要以上にやりすぎて疲れてしまったり、燃え尽きてしまったりするのです。

また、自分に厳しいだけではなく、他人にも完璧を求めたり、自分の理想を押し付けてしまったりして、人間関係がうまくいかないことや、ストレスをためてしまうこともあります。

それで、冒頭でお伝えしたように「完璧主義をやめたい、しんどい、治したい」というお悩みにつながっていくのでしょう。

完璧主義を辞めようとすると逆効果

しかし、「完璧主義をやめよう」と思うだけでは逆効果になります。

そもそも完璧主義な人は、ご本人の中に「完璧でありたい、こだわりたい、追求したい」という内発的なモチベーションがあります。

例えば、ダイエットをするときにただ「甘いものをやめよう」と我慢するだけでは難しかったり、ストレスで逆効果になることも多いものですよね。

このように、内発的なモチベーションがあるものを本能に逆らって「やめよう」と思っても、簡単にやめられるものではないのです。

ただ「完璧主義をやめよう」と思うだけでは、「やめたいのにやめられない」という葛藤状態に陥ることになります。完璧主義をやめられない自分を責めて、さらにつらくなってしまうこともありますので、気を付けてくださいね。

そもそも、完璧を目指して努力することや、1ミリでもよりよい状態に近づけるように追求すること、そして、少しでも理想に近づくことにやりがいや喜びを感じるという、完璧主義な方の特性自体は悪いことではありません。

完璧でないときに過度に自分を責めたり、落ち込んだりすることが問題なのです。

ですから、完璧主義な自分を責めるのではなく、「自分には完璧主義な所がある」「完璧を目指すこと自体はやめる必要がない」と、自分の特性をありのまま認め、受け入れるほうが効果的です。

次に、完璧主義を受け入れたうえで、強みとして活かして成果につなげていくためのポイントを4つご紹介していきます。

完璧主義を活かして成果を出す4つのポイント

「現実は決して完璧にはならない」と認識する

完璧主義を活かして成果を出すための1つ目のポイントは、「現実は決して完璧にはならない」と認識することです。

例えば、プロ野球選手でも、3割打てたらすごいバッターです。

つまり、一流選手でも7割は打てていないという現実があります。

一流のスポーツ選手は、完璧主義でストイックな方が多いでしょう。試合の時に頑張るだけではなく、日頃の練習や、普段の食事、生活習慣などもかなりストイックに完璧を目指して努力しておられるはずです。

それでも、毎回ヒットやホームランが打てて10割の打率になることは、絶対にありません。

それが現実です。そして、それでいいのです。

現実は完璧ではないからこそ、面白いのです。

もし、一つのチームや一人の選手だけが強くて、いつも勝つと分かっていたり、事前のシナリオ通りの試合展開になると分かっていたら、そんな試合は退屈で誰も見なくなるでしょう。

やっている選手も、楽しくないのではないでしょうか。

現実は理想通りにはいかない、完璧でない、何が起こるか分からないからこそ楽しい、という部分があります。

仕事も人生も同じです。いつも100%完璧に理想通り、シナリオ通りになるとしたら、最初はよくてもだんだん飽きてきます。

現実は決して完璧になりませんから、完璧にできなくても、落ち込む必要はありませんし、ましてや自分やチームメンバーを責めたりする必要は全くありません。

理想と現実の幅を受け入れる

完璧主義を活かして成果を出すためのポイントの2つ目は、理想と現実の幅を受け入れることです。

時々、完璧主義をやめようとして、「もっといい加減になりたい」という人がいます。

しかし、これでは、「完璧や高い理想を追い求めて頑張れる」という、あなたの強みまで消してしまうことになります。

例えば、プロ野球選手は毎回打席に立つとき、「絶対に打ってやる!」という意気込みで今できるベストを尽くそうとするでしょう。

「どうせ7割は打てないんだから、いい加減にやろう」などとは思っていないはずです。

つまり、毎回ベストを目指しつつも、同時に「10割打てることは絶対にない」という、完璧ではない現実も受け入れています。

ですから、三振した時には一瞬悔しそうにされます。しかし、ケロッとベンチに帰ってきて、次のプレーに集中します。

三振した時にそのまま打席に崩れ落ちて、「はー……プロなのに打てなくてダメだー。この世の終わりだー。向いていないのかもしれない。もう引退するしかない」なんて、いちいち落ち込んでいたら、やってられません。

これでは切り替えられなくて、どんなに才能があっても次のプレーもきっとうまくいかないでしょう。

このように完璧な理想を追求しつつも、同時に完璧ではない現実も受け入れること、つまり、「理想と現実にはギャップ=幅があるものだ」という前提に立つことがポイントになります。

完璧主義な人は、理想と現実のギャップが大きい

さらに、完璧主義な方は常に高い目標を目指しているので、理想と現実のギャップが大きい傾向にあります。ですからなおさら、理想と現実の幅を受け入れることが必要なのです。

完璧主義が裏目に出てしまう時は、理想と現実が重ならないといけないと思い込んでしまっています。

つまり、幅をもって見られず、「完璧な理想=現実でなくてはいけない」という点でしか見られなくなっている状態です。

「10割バッターでなければプロとして失格」というくらい、ものすごく非現実的な高い目標を自分に課し、理想と現実が重なっていない状態を失敗とか、努力不足とか、おかしいと捉えてしまっている状態です。

これではいつも自分を責めたり、「何でこんなこともできないの?」などと、チームメンバーを責めたりすることになります。

とても苦しいですし、その苦しみから逃れようと一瞬頑張って成果を出せたとしても、そのような頑張りは長続きせず、長期的に見ると消耗するばかりで安定的な成果にはつながりません。

「理想と現実は重ならなくて当たり前」という前提の上で、「1ミリでも自分なりの理想に近づけるように頑張っていけばいい。」と幅をもって見られていれば、理想と現実とのギャップはマイナス点ではなく、伸びしろになります。

小さな成果も認めて喜ぶ ―減点法ではなく、加点法―

完璧主義を活かして成果を出すための3つ目のポイントは、小さな成果も認めて喜ぶこと、減点法ではなく加点法で物事を見ることです。

仕事をしていると、時々すべてがかみ合い、とても嬉しい成果につながることがあります。チームで達成感を感じ合ったり、お客様からとても嬉しいお言葉をいただいたりすることもあります。

これはホームランです。

完璧主義な方は、高い精度で質のいい仕事をされたり、努力家で人より早く成長できる方も多いですから、こういったホームランの経験をお持ちの方も多いでしょう。

こんな成果を出せると嬉しいですよね。

その快感が、「また次もいい仕事がしたい」というモチベーションになり、さらに成長できるという好循環になれば効果的です。

しかし、「毎日をホームランにしなくてはいけない」とか「ホームランが当たり前」という感覚になってしまうのはNGです。

そのように完璧な理想だけに捉われてしまうと、足元の小さな成果を見過ごしてしまいます。

今日やれることは十分にやって、ヒットを打っているのに、「ホームランを打てなかったからダメだ」と減点法で見ていては、自分も苦しくなりますし、チームの士気も下がってしまいます。

「今日はヒットは打てた」と、客観視してできているところを認めたり、うまくいかなかった日も、「悔しかったけどこんな日もあるか。仕事しただけエライじゃん」とケロッと帰ってきて、ご飯を食べてお風呂に入って、また明日に淡々と備えていく――このように、小さな成果も認めて喜び、減点法ではなく加点法で物事を見るように意識するとよいでしょう。

長期的な視点で見る

完璧主義を活かして成果を出すための4つ目のポイントは、長期的な視点で見ることです。

これまで、「現実が完璧なんてありえない」とお伝えしてきましたが、実は現実を完璧にする方法が一つだけあります。

それは「絶対に失敗しないような環境を選ぶこと」です。

例えば、大谷翔平選手がリトルリーグでプレーしたら、10割バッターになるでしょう。子供たちの中で、一人大人がプレーして、「10割バッター、常にコールド勝ち」です。

一つ一つの試合の結果だけ見たら、完全勝利で完璧かもしれません。しかし、全然かっこよくないですし、子どもは憧れませんよね。

むしろ、「あのおっさん、いつまでリトルリーグ出てくるねん?あんな大人にだけは絶対になりたくない」と思うのではないでしょうか。そんな大谷選手は見たくありません。

短期的な完璧にこだわりすぎると、このように長期的には全く完璧ではない、ちぐはぐなことになってしまいます。

絶対に失敗しないコンフォートゾーンにい続けようとして、チャレンジできず、成長できなければ、あなたが目指す理想のビジネスパーソンにはなれないですし、幸せな生き方は実現できないのです。

目先の、「失敗したくない、失敗したらどう思われるか」という短期的な視点で考えるのではなく、長期的な「こんな生き方をしたい、ビジネスパーソンとしてこんな成長や成果を出したい」という、あなたが心から求めるビジョンに目を向けていきましょう。

長期的な理想を追求するという点で、極めたがり、追求したがりの完璧主義の特性を発揮できれば、短期的にはうまくいかないことがあっても、試行錯誤を続け、あきらめずに取り組み続けられます。

あなたが完璧主義なら、そのように高い理想を目指して、自分が納得いくまで追求し続けるプロセス自体を楽しめるはずです。

そのように短期的な結果に振り回されず、自分なりの長期的な理想に向かってコツコツ歩み続けている自分になれたら、とてもかっこいいと思いませんか?

長期的なビジョンを追求するプロセスを楽しみ、そんな自分がかっこいいなと誇りに思えていれば、自然と人よりもたくさん行動し続けることができます。

成果は行動量・継続に比例しますから、そのような長期的な積み重ねが、きっとあなたが望む成果や結果、理想の実現につながっていくでしょう。

まとめ

今回は、完璧主義を活かして成果を出すポイントについて、お伝えしました。

ポイントをまとめると、まず前提として

  • 完璧主義はマイナス要素ばかりではない
  • 「完璧主義をやめよう」とすると逆効果になりやすい
  • 完璧主義を受け入れて、強みとして活かして成果につなげることが効果的

です。そして、完璧主義を活かして成果を出すためのポイントは、

  1. 現実は決して完璧にならないと認識する
  2. 理想と現実の幅を受け入れる
  3. 小さな成果も認めて喜ぶー減点法ではなく加点法で物事を見るー
  4. 長期的な視点で見る

の4点となります。

また、今回お伝えしたポイントも、100%完璧に実践する必要はありません。

「この動画の内容を完璧に実践しないと!」という完璧主義が発動して、もっと苦しくなる!なんてパターンにならないよう気を付けてくださいね。

完璧に実践できなくても、今回お伝えしたことを知っておくだけでも、ずいぶん心が軽くなるはずです。

「なんか苦しいな」とか、「空回りしているな」と感じた時に振り返り、「あ!今、理想と現実のギャップを受け入れられてなかったな」とか、「小さな成果がたくさん出ていたのに、スルーしちゃってたな」と、少しでも気づき、修正できるようになれば、それで十分です。

あなたが完璧主義を活かして、幸せに成果を出していくために、何か一つでもご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この記事を書いた人

常光瑞穂

人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。

京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。