キャリアコンサルタント
心理コンサルタントの常光です

2023年3月期から、
上場企業に人的資本に関する戦略や
指標の開示が求められるようになりました。

(参考:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB0937H0Z01C22A1000000/

「人的資本」というのは、
人材や、人材がもつ知識やスキル、
意欲などを表します。

2020年に経済産業省から発表された
「人材版伊藤レポート」を発端に
人的資本経営に注目が集まっています。

「人材」に対するとらえ方や
マネジメントの仕方が
特にここ数年で大きく変わってきています。

「人材」のとらえ方の変化

従来、人材は「人的資源」と
捉えられることが多かったです。

資源という言葉には
「既に持っているものを使う、
今あるものを消費する」という
意味合いが含まれます。

たとえば、天然資源には
「限りあるものであり
増やすことはできない」という
意味合いがあります。

「資源」と捉えると、
マネジメントの方向性は、
「適切に使用・消費を管理する」
という考え方になり、

管理のための資金は
「費用・コスト」と捉えられます。

しかし「人材」というのは
使えば使うほどすり減ってなくなっていく
ようなものではありません。

仕事や教育を通じて
知識やスキルを高めていくことができますし、

同じ人でも、
心からやりたいと意欲を持っていることと
やらされ感で仕方なくやっていることとでは
行動量や成果が違ってきます。

自ら主体的にやりたい仕事なら
働くことでむしろ、すり減るどころか
元気ややりがいをもらえます。

そこで人材を、資源ではなく「資本」と捉え、
その価値を最大限に引き出すことで
中長期的な企業価値向上につなげていく
人的資本経営が注目されるようになりました。

人材を「資本」と捉えると、
マネジメントの方向性は管理ではなく
「人材の成長を通じた価値創造」に変わります。

人材に投じる資金は
コストではなく
価値創造のための「投資」となります。

人材への投資効果

人的資本への投資の一例として、
従業員の健康に投資する健康経営があります。

経済産業省が、従業員の健康づくりを
積極的に行っている企業を
「健康経営優良法人」として認定し、
上場企業の中から優れた企業を
「健康経営銘柄」として選定する制度があります。

健康経営銘柄に選定された企業の株価は
TOPIXを上回る形で推移しており、
健康経営と企業業績の関連が示されています。

出典:健康経営の推進について(経済産業省)2022年6月

これには2つの方向性があるでしょう。

1つは従業員の健康という
人的資本に投資しているから
優秀な人材の確保・定着ができ、
業績や企業価値が向上するという点。

もう1つは業績がよく、資金に余裕があるから
従業員の健康という人的資本に
投資できるという点。

つまり、人的資本に投資することで
業績の向上につながり、
業績がいいから人的資本に投資できるという
好循環がうまれる企業と

人的資本に投資できないから
優秀な人材が採用・定着できず、
価値創造ができず、業績も伸び悩み、
ますます人的資本に投資できないという
悪循環になってしまう企業とに
二極化していくでしょう。

また、就活生とその親を対象に、
「どのような企業に就職したいか(させたいか)」を
調査したところ、

就活生、親ともに
「従業員の健康や働き方に配慮している企業」
と答える割合が高くなっています。

出典:健康経営の推進について(経済産業省)2022年6月

従業員の健康や働き方へ投資が
優秀な人材の確保・定着のために
不可欠であることが分かります。

筆者の所感

私は2003年から
コンサルタントの仕事をはじめ、
今年でちょうど20年となります。

この20年を振り返ると、
人と組織のあり方が
本当にものすごいスピードで変化していると感じます。

20年前、創業当初は長時間労働対策や、
それによる過労対策の仕事がほとんどでした。

今、そのような仕事は全くありません。

少なくとも私が契約している企業では
働き方改革が進み、
長時間労働はほぼなくなっているからです。

現在多いご相談は
・風通しの良い組織風土づくり
・価値創造するための
 仕事の進め方、考え方
・今後のキャリアの方向性
・自己理解(強みややりたいことの理解)
・コミュニケーションスキル、交渉スキル
・管理職からの部下理解やチームビルディング、
 部下への権限移譲の進め方、
 自律的に動ける人材育成の仕方
などです。

昔は人材を資源と捉えて
「残業時間を○時間以内にする」
「少しでも体調不良を減らす」のような
管理のための相談や取り組みが多かったですが、

今は人材=価値創造の担い手である資本と捉えて
個人の幸せと組織の成果を最大化するための
相談や取り組みが多くなっています。

残業時間の管理に資金を投じても
企業の価値創造や業績に向上には
それほどつながりません。

しかし、効果的な仕事の進め方や、
自己理解、キャリアデザイン、
コミュニケーションスキル、他者理解、
チームビルディング、組織風土づくりに
資金を投じれば、
一人一人のスキルや意欲につながり、
企業のカルチャーとして蓄積され、
確実に価値創造につながっていきます。

まさに、
「管理」ではなく「成長を通じた価値創造」、
「コスト」ではなく「投資」という流れを
身をもって体験しています。

人と組織の関係性が
本当に変わってきているなと実感します。

しかし、こういった情報に触れる機会がない方は、
「人材」に対するとらえ方が
20年、30年前からアップデートされていない方も
いらっしゃいます。

先日、とある交流会で
お話しさせていただいたら

「こういうこと全く知らなかった。
だから今日の常光さんのお話は
レベルが高くて半分くらいしか
理解できなかったけど、それがよかった。

自分の専門分野以外のことも
ちゃんと勉強する時間を持たないと
ダメだなって気付かせてもらえました」と
おっしゃっていただきました。

いわゆる無知の知というやつで、
知らなかったことも知らなかったことに
気付けることって大事ですよね。

私ももちろん知らないことだらけなので
「へー。世の中そうなってるのか!
いつの間に?全然知らんかった!」と
思うことばかりです。

そういう気付きを
大事にしていきたいです。

人的資本経営については、こちらもどうぞ
▼経済産業省:
人的資本経営~人材の価値を最大限に引き出す~
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html


常光瑞穂(じょうこうみずほ)
キャリアコンサルタント/心理コンサルタント
やりたいことを実現し価値を創造する、人と組織のWin-Winで幸せな関係性をつくるための問題提起とサポートをしています。


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