キャリアコンサルタント
心理コンサルタントの常光です

今回のコラムは、
いただいたご質問にお答えする形で

経営者、管理職向けに
「子育て中部下への期待の伝え方、
成長ベクトルのすり合わせ方」を
テーマにお話しします。

動画でもご覧いただけます

メーカー管理職Mさんからのご質問

Mさんからのご質問です。

「常光さんいつも動画やメルマガを
楽しみに拝見しています。
ありがとうございます。

こちらこそありがとうございます

私はメーカーで管理職をしているものです。
30代の部下B君のことで相談です。

B君はとても優秀なのですが、
私から見ると欲がないというか
控えめな性格で、
ときどきもどかしく感じることがあります。

後輩からの信頼も厚く慕われているので、
ゆくゆくはチームをまとめていけるような
人材になってほしい、
もっと上を目指して挑戦して欲しいと
私としては思うのですが、

本人は子どもがまだ小さいこともあり、
あまり責任の重い立場にはなりたくないと、
プロジェクトを任されることを
しり込みしている状態です。

弊社も働き方改革を急速に進め、
最近では男性の育児休業や時短勤務も
増えてきました。

私は今年50歳になりますが、
私が子育てをしていた15年前は
まだまだ残業が当たり前という環境で、
私自身は子育てにあまり参加できず
後悔している部分もあります。

ですからこんなふうに変わってきたのは
とてもいいことだなと歓迎しています。

しかし、B君のような部下の人材育成に
どう取り組んだらいいのか、
このまま本人の希望のまま責任ある立場に
つかせないことが、
成長の機会やチャンスを奪うことに
なってしまわないのかと頭を悩ませています。
何かヒントが得られればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。」

ということで、ご質問いただきました。
ありがとうございます。

家庭か仕事かの二者択一ではなく
タイミングの問題

まず、家庭中心にするか、
仕事でチャレンジするかという
二者択一ではなくて、
Bさんご自身がどんなキャリアや
人生にしたいと思っているのかを
もう少し聞けると
サポートの方法も見えてくるかなと思いました。

Bさんご自身もゆくゆくは
マネジメント力を身につけていきたい、
チームをまとめていく立場になりたいと
思っているなら、
家庭か仕事かという二者択一ではなくて、
タイミングの問題ですね。

たとえば、今の状況ですぐに
プロジェクトを任せることはできなくても、
「自分がリーダーになったときには
どうするか」を考えながら
担当業務にあたってほしい、とか、

サブリーダーのような
リーダーの方を補佐する役割を
していただきながら視座を高くしたり、
スキルアップしていくことはできます。

そのためにはまずはMさんが
「あなたは仕事もできるし、
人望も厚いし、チームをまとめていく
人材になれる素質があると思う」と
評価していることを伝え、

「今すぐでなくても、
ゆくゆくは自分でもマネジメント力を
つけていきたい想いがあるなら、
あなたのスキルアップのために
力になっていきたい」という想いを
伝えていくとよいのではないでしょうか。

Bさんがもし、
仕事でも力をつけたいけど、家庭もあるし、
どうしていったらいいんだろう?と
内心は焦りや不安を感じている状況なら、
こんなふうに期待してもらえていることは
嬉しいし、安心感につながるでしょう。

Bさん自身に
考えるきっかけを与える

また、Bさんが慣れない子育てや
家庭のことでいっぱいいっぱいで
自分の将来ビジョン、キャリアのことまで
深く考えられていないこともあるでしょう。

質問文にある通り、Mさんから、
「私の時代は残業が多くて
子育てにあまり参加できなくて
後悔している部分もあるので、
B君が家庭を大事にしているのは
素敵なことだと思う。

でも一方でこのまま希望どおりに
責任ある立場につかせないことが、
成長の機会やチャンスを奪うことに
なってしまわないのか?って
心配している部分もあるんだ」と
ありのままのお気持ちを伝えて、
Bさんご自身がそのあたりのことを
どう考えているのか、
ニュートラルに聞いていくのもいいでしょう。

ただこれは、MさんとBさんが普段から
どのくらいコミュニケーションがとれる
関係なのかにも寄りますね。

BさんにとってMさんが
「あまり話す機会もないエラい人」という
ポジションなら、
1:1で話をしても本音は言わないでしょう。

「はい!がんばります!」みたいに、
表面的な会話で終わってしまっては
あまり意味がありません。

その場合は、
もう少しBさんと年齢や立場が近い
本音を言えるような
先輩社員の方に関わってもらって
キャリアについて整理したり
考えたりできる場を持つこともいいでしょう。

Bさんの想いを聞いてみても
すぐに「私はこんなキャリアビジョンを
考えています」というような
明確な答えが変えてくるわけではないと思います。

しかし、問いかけることで
「確かに子育てでいっぱいいっぱいで
考えられていなかったけど、
自分自身の仕事の方向性も
考えていかないとな。
自分はどうしていきたいんだろう?」と
考えるきっかけ作りはできるでしょう。

対話しながら
一緒に見つけていくスタンスで

仕事か家庭かという二者択一ではなく、
どのようなバランスで、
どのようなタイミングで、
どのような方向性を目指していくのかという、

Bさんにとっても職場にとっても
Win-Winなバランスやタイミングを
一緒に見つけていきたいという
スタンスで関われると
お互いに無理がないのではないでしょうか。

そのために、
会社や職場ではこのような経験がつめて、
こういったポジションで働くことで
こんなふうにスキルアップできるよ
ということは、
管理職の方から教えてもらわないと
分からないと思います。

ですからその部分は、
Mさんから「こんなチャンスがあるよ」という
情報提供はする。

一方で、Bさんがどのような人生や
キャリアを望んでいるのかというのは
Bさんご自身に考えていただいたり、
教えていただかないと
他人には分からないことなので、
プランや希望があれば教えて欲しいと伝えて、
ご自身に考えて伝えてもらう。

こんなふうにお互いなるべく正直に
話し合えると、Win-Winなやり方も
見つけやすいでしょう。

責任をおいたくないのではなく
迷惑をかけたくないのでは?

また、Bさんは仕事ができて
人望もある方ということなので、
自分が責任をおいたくないという
お気持ちよりも、迷惑をかけるのを
恐れているようにも感じます。

プロジェクトを任されても
家庭の都合で早く帰らなければならないとか、
仕事に穴をあけるのが申し訳ない。

それなら最初から
責任ある立場にならない方が
迷惑もかけなくていいし、
自分も罪悪感を感じなくていいと
お考えなのかもしれません。

他人に迷惑をかけたくないという
想いの強い方は、
「今日は早く帰らなきゃ」とか
「この日はムリ」とか断ることに
罪悪感や苦手意識を強く持つ人も
多いものです。

Bさんがそういうタイプの方なら、
「プロジェクトを任されたら全力でやらなきゃ、
中途半端にして
他のメンバーに迷惑をかけてしまうなら
最初からやらないほうがいい」というような
0か100かで極端に
考えてしまっているかもしれません。

その場合には、
「責任者になったからと言って
すべてを引き受けなくていい。
もちろんこれまで通り家のことも
優先すればいいし、
早く帰るときがあってもいい。
任せっぱなしじゃなくて、
バックアップやフォローはするから」と
伝えることで、
安心してチャレンジできるかもしれません。

「管理職になりたくない」という
先入観を持っている場合

また、「管理職=しんどい」という
イメージを強く持っていて
最初から「エラくなりたくない」という方も
一定数いらっしゃいます。

以前相談させていただいた
クライアントさんで、
こんな方がいらっしゃいました。

20代の大企業にお勤めの方で、
「今度社内のイベントで
取締役とご一緒する機会があって緊張する~
聞かれたことにちゃんと
答えられなかったらどうしよう?」
そんなふうにおっしゃっていました。

その取締役とご一緒する機会というのは、
堅苦しい仕事の場ではなくて、
みんなで楽しみましょうという
社内イベントでしたので

私から「面接じゃないから、
そんなふうにガチガチに考えなくて
いいと思いますよ。
せっかく普段あまりお話しできない方と
ご一緒できる機会だから、
逆にこちらから質問したいことを
聞いてもいいんじゃないですか」って
お伝えしました。

自分から質問することを決めておけば、
沈黙にもならないのでラクですからね。

そんなことをお伝えすると、
「確かにそうですね。
何を聞きたいかなー?」と考えて、

「今までお仕事されてて一番嬉しかった
瞬間って何ですか?」とか
「どういう時に一番やりがいを感じますか?」って
聞いてみたいですって質問を決められました。

「緊張してたけどそんなふうに
普通に話せばいいんですね。
だいぶ気がラクになりました」と、
その日のセッションは終わりました。

後日結果を教えて下さったのですが、
用意しておいた質問は聞けなかったそうです。

なぜかと言うと、
その取締役の方がとてもフランクな方で、
自分からどんどんお話しして下さったので、
質問する必要がなかったそうです。

「質問する前に自分の聞きたかったお話を
たくさんして下さって
とっても面白かったです」とのことでした。

その取締役の方が
今まで仕事してて楽しかったエピソードとか
やりがいを感じたことを話してくださって

「一般社員の自分とは視点が全く違う、
スケールの大きな仕事をしておられて、
わーすごいなーカッコいいな」と、
すごくワクワクしたそうです。

「それまで取締役って自分とは違う世界に住む
エライ人、みたいな遠いイメージだったけど、
全然イバってなくて、

『みんなもいつもがんばってくれてありがとう。
この前のプロジェクトも大変やったやろ』って
励ましてくれて、
すごく嬉しくて感動しました」って
目をキラキラさせながら
報告して下さいました。

そして「自分がそういうエライ人を
目指したいかどうかはまだ全然分からないけど、
『エラくなってもしんどいだけ』みたいに
今まで決めつけてたので、
『そうじゃなくて一般ではできない
やりがいや楽しさがあるんだな』って
ちょっと視野が広くなりました。

どんなポジションであれ、
自分もあんなふうに
仕事を楽しんでる人になりたいな。
目標にしたいなって思いました」と
おっしゃっていました。

モチベーションは説得して
与えることはできない

内発的な動機付けは、
外から与えることはできません。

外からの刺激に
その人の中の何かが反応して、
心が動いてはじめて生まれてくるものです。

ですから「この仕事は面白いんだぞ」って
ムリに説得したり言い聞かせたりして
外からモチベーションを与えることはできません。

Bさんがもし、
「管理職になったらしんどい」という
イメージでしり込みされているなら、

管理職やチームをまとめるような
責任ある立場になっても、
プライベートも充実して楽しそうだな
という人が社内に増えていけば、
Bさんの想いも変わっていくかもしれません。

管理職の方は内面では
やりがいや面白さを感じていても
それをわざわざ口にして
おっしゃっていないことも多いでしょう。

すると、部下の方には
大変そうな部分しか見えず、
しり込みしてしまうこともあります。

Mさんが管理職や
チームをまとめる仕事をしている中で
やりがいや面白さを感じているということを、
ときどき言葉にして伝えていくのも
いいかなと思います。

「相手に変わってほしい」という想いが
見え見えで説教臭くなってしまうと
逆に引かれてしまうので、
雑談の中で「こんな時が嬉しいんだよ」って
さりげなく伝えていくのがいいですね。

今回はご質問ありがとうございました。

ご視聴いただいた皆さまも、
「Mさんに共感する、分かる!」という方、
多いのではないでしょうか。

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常光瑞穂(じょうこうみずほ)
キャリアコンサルタント/心理コンサルタント
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