キャリアコンサルタント
心理コンサルタントの常光です

今回のコラムは、
経営者・管理職向けに
「人材育成でモチベーションを引き出す方法」
についてお話しします。

コンサルタントや先生業で
クライアントや生徒さんの
モチベーションを引き出したいという方にも
ご参考になるかと思います。

動画でもご覧いただけます

部下・スタッフのモチベーションを
高めるために

部下やスタッフの方の
モチベーション高めるためには、
その方が自分の業務に
意味を感じられている状態にすることが大事です。

人間は意味が感じられない活動は
続けられません。

ですから、今取り組んでいる業務が
単なる作業になっていて
「これをやったからといって何になるんだろう?」と
意味を感じられていない状態では
モチベーションは上がりません。

逆に自分にとって意味を感じられることは
自然とモチベーション高く取り組めます。

仕事の意味や本質を伝えずに、
マニュアルで手順だけを教えているような状態だと、
最初はそれを覚えてできるようになることに
成長実感があって
モチベーション高く取り組めていても、

慣れてきて当たり前に
こなせる状態になってしまうと、
日々同じことの繰り返しで
「いつまでこれ続けるんだろう?」と
意味を感じられなくなります。

そしてモチベーションが下がってきます。

成長意欲や目的意識の高い人ほど
「ここにいても成長できない」
「こんなことを続けていても
他で通用しない人材になってしまう」と
危機感を覚え、モチベーションが下がり、
別の活躍の場を探すようになります。

ですから、スタッフの方お一人お一人の
「こんなふうに成長していきたい」という目的と
会社の業務をリンクさせることができれば
個人も企業もともに
目指す方向に成長していける
Win-Winな関係がつくれます。

仕事の意味は伝えないと伝わらない

社会的にすごく意義があったり
お客さまにとても喜んでいただけるような
仕事をしていても、

大きな組織や全体の流れの中にいると
自分の周辺のことしか見えなくなってしまい、
意味が分からなくなることもあります。

ですから、経営者・管理職がより高い視座から、
「この仕事にはこんな意味がある」
「こんないい影響を与えられている」
ということを伝えていくのも大事なことですね。

アダム・グラント氏の
GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代
という本の中に、
こんな事例が紹介されています。

大学のコールセンターで
卒業生に電話で寄付を依頼する
オペレーターの方々の事例です。

卒業生に電話をかけて寄付を頼むのですが
断られる割合が98%以上で、
最もベテランで成績優秀なオペレーターでさえ
燃え尽きているという状態でした。

ベテランのオペレーターでさえ
「電話を掛けても全然うまくいかない。
出だしの言葉を言い終えないうちにさえぎられ
『寄付には関心がない』と言われて終わり」
という状態でした。

オペレーターの方々が集めた寄付は
ほぼ全額が学生の奨学金になるのですが、
オペレーターにはそのことすら
教えられていませんでした。

つまり、自分たちが集めた寄付金を
誰が受け取るのか、
どのように活用されているのか、
寄付金がその人の生活に
どんな影響を与えているのか、
まったく知らないままにマニュアルに従って
電話をかけ続ける状態だったんですね。

そして電話を掛けても98%が
出だしの言葉を言い終わらないうちに断られる。

これでは心が折れて当然ですよね。

この大学から
オペレーターのモチベーションの改善の
依頼を受けたグラント氏は、
新人オペレーターに
ある奨学生からの手紙を読んでもらいました。

そこには「奨学金が僕の人生を
変えてくれました」という感謝の言葉と、
奨学金を受けることができて、
具体的に彼の人生がどんなふうに
変わったのかがつづられていました。

たった5分間、その手紙を読んだだけで、
その後オペレーターの通話数が増え、
寄付の件数も増えました。

さらに手紙だけでなく、
奨学生と直接会って話をする機会を
5分設けました。

それだけでさらに通話数が増え、
通話時間も増え、寄付金の額も増えました。

そして、オペレーターの収入もあがりました。

オペレーターも、奨学生も、大学も、
みんながWin-Win-Winですよね。

本の中には書かれていませんでしたが、
寄付金が奨学生の人生を変えることを
知ったオペレーターは、
おそらく寄付を依頼する電話の中で
そのことを卒業生に伝えるように
なったのではないでしょうか。

自分が寄付をすることで、
そんなふうに後輩を支援することができると
知った卒業生もまた、意味や喜びを感じた。

だからこそ多くの寄付が
集まるようになったのではないでしょうか。

経営者・管理職が伝えるべきこと

経営者や管理職は視座が高く、
より広い範囲を見ています。

ですから、自分がやっていることが
顧客や社会にこんないい影響を与えている、
自分たちの仕事に意味があると
実感する機会が比較的持ちやすいと思います。

しかし、特に大きな組織の中で、
一部分の担当業務だけにあたっている
スタッフの皆さんは、

目の前の仕事をやるという
タスクに対する意識だけで、
この仕事がどう役立っているのか
何につながっているのか全く見えない、
だから意味を感じられなくなって
モチベーションが下がってしまうことも
多いのではないでしょうか。

自分たちがやっていることで
こんなにいい影響がうまれているんだと、
やっていることの結果や意味を伝えることで
部下やスタッフの方々を元気づけることができます。

経営者・管理職自身の
モチベーションが何より大事

また、経営者や管理職ご自身も
ご自分がやっていることの意味を
見失ってしまうことがあると思います。

最初はモチベーション高く
「顧客や社会に貢献したい」と始めたビジネスや、
「チームにいい影響を与えたい」
「部下の成長を支援したい」と
就いた役職であっても、
日々の忙しさの中で段々
やっていることの意味や本質を
見失ってしまうことはあります。

もちろん私自身も
そんな瞬間はよくあります。

そんなふうに自分自身が意味を見失って
モチベーションが湧かなくなっている状態で、
他の人のモチベーションを引き出すことはできません。

ですから、このようなときはまず
自分自身のモチベーションを
引き出すことが必要ですね。

経営者が意味を見出し、
会社全体が変わった事例

私のクライアントである
自動車販売業を営んでおられる
経営者さんの事例をご紹介します。

セミナーを受講される中で
ご自身がやっていることの意味を再定義し、
方向性が明確になり、
ご自身や会社のビジョンを
見つめなおしていかれた事例です。

セミナーの中で私が
「セールスは単にモノを売る仕事ではなく、
お客さまがさらに幸せな未来に踏み出せるように
『こんな素敵な未来がありますよ』と提案して
サポートする、背中を押す仕事ですよね」と
お伝えした言葉に、

その社長さんは「刺さりましたー!」と
おっしゃって、

「そうだ!私は車を売りたかったわけではなく、
お客さまがより幸せな未来をつくるための
サポ―トがしたかったんだ」と
ご自身にとっての仕事の意味を再定義されました。

責任感が強くストイックな方で、
それまでは「経営者たるもの、
お客さまのためスタッフのためにやるべき」と、
時には自己犠牲もいとわず
長年がんばっておられたようです。

しかし、ご自身にとっての仕事の意味を再定義すると
「やるべき」「やらねば!」ではなく
「もっとこんなサポートがしたい!」と
内発的なモチベーションが湧いてきました。

そして、「お客さまがさらに幸せな未来に
踏み出せるようにサポートする」という
あるべき姿から、自分たちが本当にやりたいこと、
そして、今ある自分たちのリソースで
できることは何かを考えていかれました。

すると、お客さまの表面的なニーズに応えようと
「あれもこれも」とサービスメニューを
増やしすぎていて、
かえって大事にしたい本質を
見失ってしまっていることに気付かれました。

つまり、メニューが多すぎて、
ご自身やスタッフの方が
日々のやるべき作業に追われ、
「お客さまがさらに幸せな未来に
踏み出すためのサポート」という意味を
見失いがちになっていたんですね。

「こんなふうに目の前の作業だけに
追われるような働き方をさせてしまって
スタッフのみんなに申し訳ない。
私はこんな会社を
つくりたかったわけじゃないんです」という
ご自身の想いに気付かれた社長さんは、

思い切っていくつかの事業から撤退して
サービスメニューを7割程度に減らし、
お客さまとの相談時間を
しっかり確保することに決めました。

お客さまがご希望のお車を買えたとしても
その後ローンやお金が回らなくなって
生活が苦しくなっては幸せにはつながりません。

ですから、単にご希望車種や
ご予算を聞くだけではなく
お一人お一人のライフスタイルを
しっかりお聞かせいただいて、
お子さんの成長やライフスタイルの変化を見据え、
お客さまに最善の提案をする、

自分たちが車を売るという意識ではなく、
「お客さまのその後の人生が
より良くなるように」という視点で、
しっかり提案をしたい。

そのために相談時間を確保することに決めたのです。

その結果、お客さまからは
「しっかり寄り添ってもらって
自分では気づいていなかったような点まで
しっかり考慮して提案してもらえて大満足です」
という口コミが増えました。

スタッフの方々も
やりがいと喜びを感じて
モチベーション高く仕事ができるようになり、
業績もよくなったそうです。

サービスメニューを減らすのは
増やすことよりずっと勇気がいることです。

私から「メニューを減らして
何かデメリットはありませんでしたか?」と
お尋ねしたところ、

「デメリットは何一つなかった。
100%メリットしかなかった」とのことでした。

とっても素晴らしい取り組みですよね。

スタッフの皆さんの意識も
「ミスなく仕事をやらなきゃ」
「今日中にこれやらなきゃ」という
タスクに対する意識だけではなく、

「お客さまのために何ができるか」という
意識に変わっていき、
「もっとこうすればいいんじゃないか」と、
業務改善に対するさまざまな意見が
出てくるようになったそうです。

休みの日にも差し入れを持って
お店に顔を出すスタッフの方もいらっしゃるそうです。

つまり、やらされ感ではなく、
自分で何ができるかを考えているから
仕事が楽しい。

「自分の改善案がどうなってるかなー?」
「今日お店どんな感じかなー?」
って気になる。

「会社に行かなきゃ」ではなく、
休みの日にも差し入れを持って
ちょっと顔出したくなっちゃう。

とても素敵な社風だなと思います。

現在は「今後10年かけて
本当の健康優良企業をつくる」という
さらなる目的のために、
他のスタッフの皆さんにも研修を受けてもらい、
全社一丸となって取り組んでおられます。

自分にできることからはじめる

この企業さんは
従業員7名の小さな組織です。

小回りの利く小さな組織で、
社長自らトップダウンで
意欲的に取り組まれたので、
取り組み始めて3か月程度の短期間で
会社の雰囲気が変わっていきました。

しかし、大きな組織の中で
中間管理職をされている方は、
自分の権限の中でできることが限られていて、

「こんなふうに変えていくことは難しいな」と
感じることもあるでしょう。

サービスメニューを減らすなんて、
自分の権限だけで勝手に進められませんからね。

お一人お一人環境もリソースも違いますから、
ムリなくご自身の権限の中で
できることから始めていくのがいいでしょう。

まずはご自身の仕事の意味の再定義、
ご自身のさらなるモチベーションアップから
始めるのがオススメです。

自分がどんなチームをつくりたいのか、
経営者・管理職としてどうありたいのか、
自分の仕事で誰にどんな影響を与えたいのか、
与えているのか。

――心から「このためならやりたい!」と思える
意味を再定義できたら、
モチベーションが湧いてきます。

また、チームに働きかけるときにも、
いきなり全体を動かそうとせず、
まずはチーム内に一人だけ
理解者を増やすところから
始めるのがいいでしょう。

たとえば自分が5人のチームの課長さんなら、
その次の主任さんとか、
「この人なら分かってくれそうだな」という
一人だけを選ぶ。

そして、このコラムの内容を
共有していただいたり、
「みんなが意味を感じて
モチベーション高く働けるチームを
作っていきたいんだよね」という
想いを共有していったり、

まずは、主任さんのモチベーションアップを
自分がどう支援できるかだけに
焦点を絞って実践してみる。

そんなふうに小さく始めて
だんだん大きく育てていくのがオススメです。

最初からがんばりすぎると、
それこそうまくいかなかったときに
「はー何やってんだろ?」と意味を見失って
モチベーションがなくなってしまいます。

モチベーションを高めようとする取り組みで
モチベーションが下がってしまうなんて
コントみたいな展開ですからね。

ですから最初からあまり
意気込み過ぎないほうがいいでしょう。

また、よかったら皆さまからも、
「自分の会社ではこんなふうに取り組んで
いい成果が出たよ」とか、
「自分自身のモチベーションアップのために
こんなことが役立ったよ」など
アイデアや事例、
このコラムのご感想、ご意見など
お寄せいただけるととても嬉しく思います。

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常光瑞穂(じょうこうみずほ)
キャリアコンサルタント/心理コンサルタント
経営者・ビジネスパーソンが本当のニーズをかなえるための生き方デザインをお伝えしています。


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