キャリアデザインをするときに
「決めたからにはやり遂げなければ」と
最初の計画にこだわりすぎてしまう人がいます。

これは効果的ではありません。

ある程度計画することは必要ですが、
やってみて自分の気持ちや状況を
客観的に確かめて、
柔軟に変えていくことも必要です。

キャリアデザインというのは、
「何歳で何をする」というように
ガチガチに自分の人生の計画や
スケジュールを立てることではありません。

人生というのは
偶然や予測不能なことがほとんどですから、
すべてを計画して
自分の決めた通りにすることなんて不可能です。

しかし、だからと言って
何も考えずに流されているだけでは
やはり自分の望む人生にはなりません。

偶然や予測不能なことが多い中で、
自分の大事にしたいことや、
向かいたい方向性を見定め、
舵を切りながら流されていくことが効果的です。

偶然や予測不能なことを
先行き不透明で不安なことと
とらえるのではなく

自分の向かいたい方向に向かうために
うまく活用していけば
省エネで望む生き方を
つくっていくことができます。

動画でもご覧いただけます

過去の決断や投資より
これからを考えよう

たとえば、今の環境や仕事が
もうあまりワクワクしなくなっているのに、
「決めたからにはやり遂げなければ」と
こだわってしまったり、

今まで何年もやってきたことを
捨てるのはもったいない、
今まで投資してきた時間やお金が
ムダになってしまうと思い込んで、

ワクワクしない流れに
一生懸命しがみついて
乗り続けようとしてしまうことがあります。

しかし、ワクワクしない
自分が幸せを感じないことに
これから先も時間やエネルギーを
投資し続けることの方が
人生のムダ遣いではないでしょうか。

そもそも「自分で決めた」とか
「自分の好きなことを選んだ」と
思っていることでも、
自分で決めている部分は
実はそれほど多くはありません。

ですから「自分で決めたからには」などと
必要以上にプレッシャーを
感じる必要はありません。

そもそもそれほど
自分で決めていない!?

たとえば、子どもの頃の友だちは
自分で好きな人や気の合う人を選んで
友だちになったと思うかもしれませんが
本当にそうでしょうか?

実は自分で決めた要素よりも
偶然の要素の方がずっと大きいはずです。

たまたま生まれた時期や
住んでいる地域が同じで、
たまたま同じクラスになったり、
出席番号が近くで席が近かったり、

同じサークルや部活で
たまたま一緒になった人と
友だちになった人が
ほとんどではないでしょうか。

つまり、自分で選んだ部分よりも、
生まれた場所や時期、
名前や出席番号などの
自分で決めていない部分の方が
影響が大きいのです。

そしてそれは悪いことではありません。

その偶然の出会いがありがたいな、
たまたまあの子と同じクラスになって
出会えたから、すごく楽しかった!
という素敵な偶然がありますよね。

もし「こんな人と出会って、
こんなふうに友情を育んで
一緒にこんなことをするんだ」なんて
自分でガチガチに計画を立ててしまっていたら、
そういった偶然の出会いはありません。

(そんな勝手なシナリオに
当てはめようとしてくる友だちは怖すぎるwww)

ですから、自分でガチガチに
計画しようとするのではなく、
偶然の出会いを楽しみながら、
さらに楽しそうなところに
自分から近づいて行ったり、
出会いたい人に出会いに行く。

こんなふうに流れの中で
舵を切っていくのが効果的です。

仕事やキャリアもほとんどが偶然

職業やキャリアを選ぶのも同じです。

自分で好きな仕事を
選んでいるつもりでも、
100%自分の意思で選んで決めたわけではなく
たまたまや偶然の要素がかなり大きいはずです。

たまたま知り合いにその職種の人がいたり、
たまたま目に入った電車内の広告で
「こんな職業があるんだ」と知って
興味を持ったり、

何気なく参加したセミナーの
本題とは関係ない講師の方の雑談で
「こんな働き方があるんだ」と知ったり、
そんな偶然の要素がかなり大きいです。

ですから過去に決めたことに
あまりこだわりすぎないほうがいいでしょう。

決めた後にもっと素敵な
たまたまや偶然に
巡り合うかもしれないのですから。

筆者のキャリアチェンジ

私は大学を卒業して
最初はメーカーに就職しました。

子どものころからモノ作りが大好きで
工学部に進学して、
そのまま好きなことをやりたいと
エンジニアになりました。

念願かなってやりたい仕事に
ついたはずだったのですが、
結果的には自由度が少ない
長時間拘束される働き方が合わなくて
1年3か月で辞めました。

当時は「子どものころから
やりたかった仕事について、
自分の行きたい会社を
自分で選んで決めたけど
合わなかったな」と思っていました。

しかし、今振り返ると、
自分で決めた要素って
そんなになかったなと思います。

というのは、日本では
「学校を卒業したら会社に入るものだ」
という空気がすごく強いですね。

私も大学院生で就活をした時には
何の疑いもなく
そう思い込んでいました。

ですから何の疑いもなく普通に就活をして、
学校推薦がもらえる
会社のリストの中から
行きたい会社を選びました。

今振り返るとそれは、本当に自分が
「こんなライフスタイルがいいな」とか、
「こんな働き方をしたいな」という
キャリアデザインをしたわけではありません。

「まずは会社に入るものだ」という
誰かが決めた生き方のデザインがあり、
その中で入る会社を選んだだけです。

私の場合は、そんなふうに
会社に入ってみた後で、
その中では自分が望む働き方は
できそうにないと気づきました。

そして今は自営業をしています。

人それぞれ何を大事にしたいか、
求めるものは違いますが、
私にとっては今の働き方の方が
すごく自分に合っているなと思って
気に入っています。

でも、そんなに短期間で辞めるなら、
最初から起業すればよかったのかというと、
大学生の時に起業しようとは
全く思いませんでした。

そもそも「学校卒業したら会社に入るもんだ」
という前提の中でしか
考えられていませんでしたから、
起業という選択肢は思いつきもしませんでした。

今振り返ると、就活の中で
会社見学やインターンシップに行っても
あまりワクワクしていませんでした。

しかし、それを自分で認めてしまうと
ややこしいことになります。

「会社に入るもんなんだ」という
前提の中で考えた方が分かりやすいからです。

学校推薦で行ける会社のリストがあって、
「いつまでに応募したい
会社を選んでください」
「いつまでに事務局に
必要書類を提出してください」なんて
やり方が明確に決まっていたら、

ベルトコンベヤーのように
その流れに乗る方が安パイだなと
20代の大学生は思うのが普通でしょう。

私もその例にもれず、
その流れの中でやりがいを見つけることしか
考えていませんでした。

ワクワクしない気持ちに
無意識に一生懸命フタをして
気付かないようにしていたなと思います。

生き方や働き方の
自由度が増えたと言われる現在ですが、

今、20代の方のお話を聞いても
私が就活した25年前と
あまり状況は変わっていないように思います。

一斉にリクナビ登録して、
説明会に参加して、
エントリーシート書いて……とか、

学校推薦で応募できる中から
行きたい企業を選んで……とか、

公務員や教員を目指す人は
またそちらの「こうやるものだ」という
流れがあります。

その流れに乗っていないと
「え?まだ説明会行ってないの?
何してるの?大丈夫?」と言われたり、

ちゃんとしていない人扱いされたり、
プレッシャーもすごくあるように感じます。

特にやりたいことや
方向性が見つかっていないなら、
「とりあえずこうするものだ」という
流れに乗ってみることも
全く悪いことではありません。

体調を壊すほど自分に合わなかったり、
すごく苦しくて行動できないなら
そんな流れに乗る必要はないですが、

「まぁこういうものなのか」と
それほど疑問も不満も持たずに
流れに乗れちゃう感じなら、
乗ってみるのもいいでしょう。

その中で見えてくるものもあります。

しかし、一度乗ってしまったその流れを
ずっとそのレールに乗って
流されていかなければ!と
思い込んでしまうと、
自分の向かいたい方向には向かえません。

ですから自分で舵を切ることも必要です。

また、同じ流されていくにしても、
自分にとっての幸せは何かを把握して、
「こんな人生を送りたい」という
方向性を持ちながら流されていくことで、

流されている間も
自分の欲しい情報やチャンスに
気付きやすくなります。

そして、そろそろ転換期だな、
流れを乗り換える時期だなという
節目が来たら

そこは多少流れに逆らってでも泳いで行き、
自分の望む流れを選びながら
また流されていく。

そんなふうに自分の望む生き方を
つくっていくことができます。

もし自分で舵を切る視点が持てていないと、
流されている時に
「自分の向かいたい方向に
ちゃんと向かえているか?」と
目的地を見るのではなく、

「この誰かが決めた生き方を
問題なくちゃんと遂行できているか?」と、
レールから外れていないかばかり
見てしまいます。

それでは舵を切るタイミングも
分からなくなってしまいます。

舵を切るのに勇気はいらない

私は新卒で勤めた会社を辞めた時に
「辞めるのには勇気がいったでしょう」とか
「よく決断できましたね」と
たくさんの方に言われました。

勇気を持って決断したつもりは
全くなかったので、
最初は「なんでそんなこと言われるんだろう?」と
すごく不思議でした。

私が最初の会社を辞めた時の気持ちは
「今の環境の中では
自分が望む生き方は見つかりそうにないな。
どうすればいいか考えてみたい」と
思っただけです。

ずっと理系でキャリアデザインとか
心理学は未知の分野だったので、
自分の将来の生き方を考えるためには
キャリアデザインや心理学を
学んでみようと思い、
大学に行くために辞めました。

自分の将来が見えなくなっているのに
その将来を見つけるための考え方を知らないと
見つけることはできませんし、

「キャリアデザインや心理学が面白そう!
学んでみたい!」と興味を持ったから
学ぶことにしただけです。

当時は、学んで自分の働き方や
生き方を整理したら、
またエンジニアに戻ろう、
もうちょっとゆるい職場探して
どこか就職できるだろう、
というくらいの気持ちでした。

ですから勇気を持って決断というつもりは
全くありませんでした。

そして、なぜそんなふうにできたかを
振り返ってみると、
たまたま周りの環境がよかっただけです。

「会社辞めるね」と
家族や友だちに言ったときに、
誰にも反対されませんでした。

「え?もう辞めるの?早っ!」と
ビックリされることはありましたが、
「あなたが決めるならそれでいいんだよね」
という感じでした。

不安をあおったり、
脅してくるような人もおらず、
「3年勤めないとダメだ」みたいに言う人も
一人もいませんでした。

つまり、たまたま私がいた環境が
「流されるもよし、
自分で流れを選ぶもよし」という
カルチャーにいたから、

自分で自分の生き方を考えてみようと、
勇気も決断もいらずに
自然な流れでできただけです。

自分らしく幸せなライフスタイルや
生き方をつくっていくためには
勇気や才能はいらないですし、
強靭なメンタルや決断力も必要ありません。

ただ、自分で流れを作ったり
選んだりする局面があってもいいよ、
自分で舵を切ってもいいよ、と、
思えているかどうか。

ただそれだけの違いです。

違和感をチャンスに変える

何かをやってみて、違和感があったり、
ワクワクしなくなっている自分に気付いたら、
それはマイナスではありません。

「本当に望んでいる生き方って何だろう?」
「今、思ったほど楽しめていないのは
なんでだろう?」と考えるチャンスです。

その中で自分が大事にしたいこと、
本質に気付けます。

気付いた結果、
違う道に踏み出すことになっても、
今までやってきた中で身につけた
スキルや実績を捨てたり、
ムダにすることにはなりません。

今まで身につけてきたスキルや経験を、
もっとやりたいことのために活かせる。

ただそれだけです。

転職した筆者の例

私は、機械設計のエンジニアから
キャリアコンサルタントに変わりましたが、
それはまったくマイナスではなく、
むしろプラスに働くことのほうが
圧倒的に多かったです。

具体的にどのような
プラスがあるか挙げてみると、
まず、文系の人事系職種出身の
コンサルタントが多い中で差別化ができます。

また、モノの設計を通じて身につけた
デザイン思考が
キャリアデザインにも活かされています。

クライアントさんから
セミナーや説明が分かりやすいと
言ってもらえることが多いのですが
(突然自慢してスイマセンw)

それは工学部で論理的思考を
身につけてきたからこそです。
(私はもともと口下手で
話がうまい方ではありません。)

また、最初に長期契約をいただいた
クライアント企業は機械メーカーでした。

その会社の社長さんが
「常光さんは元エンジニアだから
若手のエンジニアが相談しやすそうだね。
文系で機械のこと全然知らない人よりいいね」
と言って契約して下さいました。

実際には、キャリコンの仕事は
別にその会社の業務の経験がなくてもできます。

しかし、そういうイメージを
持っていただけるのはラッキーですね。

その企業とは今でも契約を
続けていただいていて、
もう15年以上のお付き合いになります。

工学部に納めた学費も
このお仕事だけで
すんなり回収できました。(感謝!)

ですから、エンジニアを辞めたら
工学部で学んだことがムダになってしまうとか、
今までの投資がムダになるなんてことは
全くありません。

「ムダにしちゃいけない!」と
しがみつこうとするのではなく、
複数分野の経験がある人材として差別化したり、
活かしていくにはどうしたらいいかを
考えた方が良いでしょう。

最初の計画に
こだわりすぎてしまう理由

「はじめたからにはやり遂げないと」と
最初の計画にこだわりすぎてしまうときは、
こういう流れでやるものだという
キャリアプランが一つしか
見えていない状態です。

その一つの道しか見えていないから
「そこから外れたら
今までやってきたことがムダになる、
ゼロからのスタート」という
イメージでとらえてしまうのです。

しかし実際には道は一つではなく、
地続きになっています。

一つの流れを外れるのに
清水の舞台から飛び降りるような決断
なんていりません。

その道を外れても
外れたところにもちゃんと地面があるからです。

今の流れがあまり
ワクワクしなくなっている自分に気付いたら、
どこに向かいたいかを考えて、
小さくテストして
別の道を歩いてみるのがいいでしょう。

テストして違うなと思ったらまた戻ったり、
別の道を探せばいいだけです。

最初の計画にこだわりすぎず
柔軟に考えていくと、
自分に変なプレシャーをかけずに
キャリアデザインがしやすくなります。

転職や起業のような大きな決断だけではなく
普段の仕事をしながら
「そろそろこの仕事も
飽きてきたなぁ」と思ったら、

自分の目指す生き方や
スキルアップしたい方向性を考えて
別の役割や業務にアサインしてもらえるように
上司と相談してみるのもいいでしょう。

自営業やフリーランスの方なら、
目の前の仕事やお客さまからのご依頼に
一生懸命お応えするだけではなく

自分なりに今後の方向性を考えて、
お客さまに「こういうこともできますよ」と
やりたいサービスメニューを提案してみると、

スキルアップや実績を積みながら
お客さまにも喜んでいただけるでしょう。

こんなふうに小さく舵を切ることを
継続していくと、ムリなく流れに逆らわず、
自分の行きたい方向性にも行けて
満足度や幸せ感が上がっていきます。

過去の決断にこだわりすぎずに
柔軟に考えていきましょう。


常光瑞穂(じょうこうみずほ)
キャリアコンサルタント/心理コンサルタント
経営者・ビジネスパーソンが本当のニーズをかなえるための生き方デザインをお伝えしています。


自分らしく幸せを実現する
ライフキャリアデザインについて
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