この記事では、「早くあきらめて次に進む方法ー切り替え上手になるための3つの具体的なポイントー」について、キャリアコンサルタント・臨床心理士の視点から解説します。
何かがうまくいかず、頭では「早く切り替えて次に進みたい」と思っているのに、なかなか気持ちの整理がつかず、あきらめきれず、引きずってしまう。こんなお悩みはありませんか?
例えば、仕事で期待していた結果が得られなかったり、目指していたポジションを逃した時、すぐに気持ちを切り替えられる場合もあれば、なかなか切り替えられず悩むこともあるでしょう。
「あの時もっとこうできたはず」「ああしておけばよかった」と過去を引きずったり、うまくいっている周囲の人を見て焦りや嫉妬を感じたり、また、そんな気持ちを持ってしまう自分自身に対しても自己嫌悪を感じる人もいます。
プライベートでも、例えば妊娠や恋愛、人間関係など、努力だけではどうにもならないことも人生には数多くあります。
だからこそ、目標に向かって努力し続けるだけでなく、時にはあきらめる、手放すことも大切です。
このような時に、早くあきらめて次に進むために、切り替え上手になれる3つのポイントをこれから解説していきます。
目次
切り替え上手になるためには、次の3つのポイントを意識しましょう。
これら3つのポイントを意識することがなぜ効果的なのか、これから順に解説していきます。
まず、ポイント①「無理にあきらめようとしない」と、ポイント②「あきらめきれない気持ちのまま、別のことをやってみる」について見ていきましょう。
よくあるNGパターンとして、「気持ちを切り替えてから次に行きたい」、「すっぱりあきらめがついてからでないと次の行動に移せない」という思い込みを持っている場合があります。
しかし、これは順番が逆です。
すっぱりあきらめたから次に行けるのではなく、あきらめがつかずモヤモヤした気持ちのままで、別のことをやっているうちに、だんだん気が紛れ、あきらめがついていくのです。
この順番を間違えていると、いつまでもあきらめがつきません。
なぜ、あきらめがつかないままで別のことをやるとよいのかというと、人間は同時に2つ以上のことはできないからです。
例えば、面白い動画を見て大爆笑しながら、同時に昨日あったイヤなことを思い出して落ち込むことはできません。
大爆笑していた5分後にイヤなことを思い出して落ち込むというように時間差ではできても、同時にはできません。
この性質を活用して、あきらめきれない気持ちを抱えつつも、別の活動をしてみましょう。
思わず笑える瞬間や、気が紛れる瞬間が生まれることで、徐々に気持ちを切り替えられるようになります。
最初はモヤモヤ99%、ちょっと気が紛れていた瞬間1%くらいの割合かもしれません。
それが続けているうちにだんだん、モヤモヤが9割:楽しい瞬間が1割などに比率が変わっていきます。
その割合がさらに8:2になって、7:3になって、5:5になって、2:8になって…というように、徐々に変わっていき、気付いたらいつの間にか切り替えができ、あきらめがついていきます。
また、「あきらめる」ということは意識してできることではなく、結果として起こることです。
「意識してできる事ではなく結果として起こること」というのは、汗と同じと考えると分かりやすいでしょう。
暑くて汗をかいている時に「汗をとめよう」と意識したところで、直接汗をコントロールして止めることはできません。
しかし、空調を調節したり、上着を脱いだり、体温を下げる行動をすれば、汗は止まります。
あきらめるのもそれと同じです。
「早くあきらめなきゃ」と意識して強く思ったからと言ってあきらめがつくわけではありません。
別のことをやっているうちにだんだん気が紛れ、結果的にあきらめられていったり、100%あきらめきれなくても自分なりに気持ちの折り合いをつけて切り替えていけます。
また、この時の「別の行動」は、意識を他に向けるためにやることですから、ある程度の集中を要する活動や負荷のある行動が効果的です。
例えば、精神的につらいからとか、疲れているからと、ダラダラとあまり興味のないテレビを見続けるようなほとんど集中のいらない、負荷のない行動を選んでしまうと、その活動をしながらも頭の中はあきらめられないことを考え続けてしまいます。これでは意味がありません。
例えば、午前中にミスして落ち込んでいたけど、午後からめちゃくちゃ忙しくなり、目の前の仕事に集中しているうちに気付いたら気が紛れ、夕方には気持ちが切り替えられていた。そんな経験を持つ方も多いのではないでしょうか?こんな時、午後からもヒマでダラダラと考える時間やゆとりがある方が、ずっとミスのことを考え続け、引きずってしまいがちです。
ですから、目の前にやるべき仕事があるなら、とにかくそちらをやればよいですし、気晴らしに散歩やジョギングするなどもよいでしょう。
ある程度集中力のいる活動や、負荷が高い活動を選ぶようにしてください。
また、どのような行動をすると切り替えやすいかは人によっても違います。
一人で過ごす時間が必要という人もいれば、逆に人に会いに行ったり、おしゃべりをする方が視野が広がり、切り替えやすいという人もいます。
普段から、没頭できる趣味やスポーツ、自分が居心地のよいコミュニティなど、自分に合った様々なパターンのリソースを持っておくのがよいでしょう。
次に、ポイント③の「あきらめきれない気持ちを受け入れる」について解説します。
自分の中にあきらめきれない気持ちがあることを認め、あきらめきれない気持ちがあってもいいんだと、受け入れたほうが、結果的に早く気持ちが消化でき、あきらめがつきます。
逆に「早くあきらめなきゃダメだ!」「いつまでもグルグル考えていてはダメだ!」のように、自分の中にある「あきらめきれない気持ち」を「こんな気持ちを持ってはいけない」と否定して、無理に早く終わらせようと意識するほどこじらせてしまい、なかなかあきらめがつかなくなります。
静かな水面に小石を投げると波紋が広がりますが、その波紋は手を加えずに放置すれば自然に消えていきます。
放置せずに水面を触ってしまうとさらに波が立ちます。
気持ちもこれと同じです。「今、心に少し波が立ってるなぁ。なかなかあきらめきれない気持ちがあるよなぁ」と受け入れて、放置しておくのが一番早く気持ちが消化できます。
逆に、気持ちをそのまま受け入れて放置することができずに、「早くあきらめなきゃ、切り替えなきゃ」と焦ってあれこれ手を加えてしまうと、余計に心が波立ってしまいます。
逆説的で不思議な感じがしますが、「あきらめきれない想いがあるなぁ」「なかなか気持ちの切り替えができない自分がいるなぁ」「周りの人を見て焦ったり嫉妬してしまってるなぁ」「まあそういうこともあるよな」「そういう気持ちがあってもいいよな。人間だもの」と、受け入れる方が気持ち早く消化できます。
焦る気持ちが出てきたときには、心の中に波紋の映像を思い浮かべてみて下さい。
「放っておけばいつか穏やかになる」と思って放置できれば、自然に切り替えたり、あきらめたりしやすいのでお勧めです。
今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
常光瑞穂
人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。臨床心理士。
京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。
弊社では、ビジネスパーソンが幸せに成果を出すために役立つ「幸せビジネス心理学®」のコンテンツを企業研修・個人コンサルにてご提供しております。