自己肯定感の低さや、「自分を好きになれない」「自分が嫌い」ということに悩む方がいます。
自分が嫌いよりは好きな方が幸せに生きやすいですし、自分を好きになれたら、それに越したことはないでしょう。
しかし、今現在「自分を好きになれない」「自分が嫌いだ」と感じている方が、無理やり自分を好きになろうとしても難しく感じてしまうのではないでしょうか。
無理に自分を好きになろうと努力することが、かえって「自分を好きになれない私はダメだ」という自己否定につながり、悪循環になってしまうこともあります。
では、今、自分を好きになれないと悩んでいる方は、どうしたら自己肯定感を高め、少しでも自分を好きになることができることができるのでしょうか。
この記事では、そのプロセスについて詳しく解説していきます。
自分を好きになりたいけど難しい、無理!と感じる方のご参考になれば幸いです。
目次
今、「自分を好きになれない」と感じている方は、まず、「自己肯定感」と「自分を好きになること」の違いを理解することから始めるのが効果的です。
「自己肯定感が高い人=自分を好きな人」と思っている方も多いのですが、これは誤解です。
自己肯定とは、自分の好ましい点も、嫌だと感じる点も、そして嫌だと感じている感情も、すべて含めてありのままを事実として認めることであり、必ずしも自分を好きになることではありません。
この点は、下記の記事でも詳しく解説していますので、あわせてぜひお読みください。
自己肯定感を高めるためには、まず自分をありのまま・客観的に観察することが必要です。無理に自分を好きになろうとする前に、自分がどのような感情を持っているのか、どのような特徴があるのかを正直にありのまま認識するようにしましょう。
自分を好きになろうと欠点をなくして完璧な自分を目指そうとしたり、自分の良い所だけを見て自信を持とうとするのではなく、不完全な自分をそのまま認めることが自己肯定です。
もし今、ご自身の中に「自分を嫌い」とか「好きになれない」という感情があるなら、「そんな風に思っている自分がいるんだな」「そういう気持ちがあっても別にいいよな」と、ありのままに認めるところからはじめましょう。
別に自分のことが好きになれなくても犯罪でも何でもありません。ですから、自分を好きになれないことを心苦しく思ったり、そのことで自分を責めたりする必要は全くありません。そのくらいの気持ちで自分と付き合っていく方が、気楽でよいのではないでしょうか。
「自分を好きと堂々と言える人にあこがれるけど、今の自分は違うな」とか、「今は無理だな、自分を好きとあまり思えないな」と、ありのままを認める。
健全なあきらめや開き直りも必要です。
また、自分を丸ごと嫌っているわけではなくても、自分の中に「ダメなところ」があると感じたり、コンプレックスに悩むこともあります。
その場合は、「こういうところがダメと感じている自分がいる」、「こういうコンプレックスが自分の中にある」のように、ありのままに認めることからはじめましょう。
人間だから完璧でないのは当たり前ですし、「ここは嫌だな、嫌いだな」と感じることも普通の感情です。まずはその感情を否定せずに受け止められるようになると自己肯定につながります。
また、自分では嫌いな部分も、他人から見れば「魅力的」「チャームポイント」と評価されることもあります。
それは感じ方の違いであって、どちらの感じ方が正解というものでもありません。
たとえば、「口下手で想いがはっきり言えないところが自分では嫌だなぁと思うんだけど、友だちからは『そういうところが優しさでもあるよね』って言ってもらえるし、長所でもあるのかもしれないな」のように、「嫌だけども、見方を変えると長所とも言える」のように両方の感じ方、捉え方をありのままに認識するようにしましょう。
「友達からは褒めてもらえるんだから、こういうところを自分でも好きにならなきゃ!」などと、どちらか一方の物の見方だけを正解と捉え、無理に感じ方を変えようとするとなかなかうまくいきません。
このように、まずは自分が嫌だなと思っている点も含めて、そしてそれはあくまで自分の感じ方であって他者は必ずしもそう感じないものだという点も含めて、ありのままを客観的に事実として認識することが、自己肯定感を高めるための基本となります。
今、自分を嫌い・好きになれないと感じている人が、「自分を嫌っちゃいけない」「自分を好きにならなければ」と無理に感じ方を変えて自分を好きになろうとすると、ありのままの自分の感情を否定していますから、逆に自己否定が強まり、もっと自分が嫌いになってしまいます。
自分を好きにならなきゃ!
いやそんなの無理!好きになれない…
やっぱり自分を好きになれない自分ってダメだなぁ
このように自分自身に対する葛藤が強くなり、もっと自分のことが嫌いになってしまうという、悪循環になってしまいます。
これは、対人関係を思い浮かべていただくと分かりやすいでしょう。
例えば、職場で最初はちょっと苦手だなと思っていた人でも、一緒に仕事をやっていくうちに「言い方がぶっきらぼうなだけで、根は優しい人なんだな」とか、「自分とは違うタイプだから最初は苦手だったけど、この人にはこの人のやり方があり、それはそれでいいんだな」とか「自分にない視点や気付きを与えてくれる人だな」などと多面的に見られるようになり、苦手意識が薄れていくことがあります。
しかし同じように、まだ相手のことをよく知らないけど、ちょっと苦手意識がある人と一緒に仕事をしなければならないという状況で、最初から「これから一緒に仕事をする大事な仲間なんですから、必ず好きになってください」「苦手意識を持ってはいけません」と言われたらいかがでしょうか。
「そんなの無理!」と反発する気持ちが出てきませんか?
このように「好きにならなければダメ!」「苦手と感じてはダメ!」と言われても、人を好きにはなれません。
むしろ、感情に逆らって無理やり「仲良くしなければ」「好きにならなければ」というストレスを与えられると、「あの人さえいなければ、こんなに悩むことはないのに」と、一層相手のことが鬱陶しく思えてきて、嫌いになってしまいます。
自分自身についても同じです。好きになれない気持ちを無理に捻じ曲げて好きになろうとすると逆効果になってしまいます。
また、自分の嫌いな部分を変えたいと思うことは自然なことです。
自己肯定とは、現在のありのまま自分を事実として認めることですが、それは「今後もずっと変わらない自分でいなければならない」という意味ではありません。
今の自分を「こんな自分がいるな」「こんな部分があるな」と受け入れたうえで、未来に向けて変化していくことはむしろ望ましいことです。
自分を変えることは、過去の自分を否定することではなく、成長です。
ですから、今は自分のことが好きになれないと認めて、その気持ちやそう思っている自分を受け入れることは、「未来永劫自分は自分を好きになれないんだ」とか「自分を嫌ったままで一生生きていく」ということには全くなりません。
「今はどうしても自分のことが好きになれないな」という自分を受け入れたうえで、「これから少しずつでも、自分を好きになれたらいいな」と目標を立てて、変化していけばよいのです。
例えて言うと、ダイエットをしたいなら、まず最初に体重計に乗って、今の体重を認識しなければならないのと同じです。
例えば今の体重や体脂肪率をきちんと測定し、ありのままを認識することは、「未来永劫そのままでいい」ということではありません。むしろ、現状を認めることは、変化するための第一歩として必要なことなのです。
さらに、嫌な部分は必ず変えて成長しなければならないかというと、それも違います。
人間には遺伝的に決まっているところも多いですし、残念ながらどんなに努力しても変わらないところもあります。また、弱点がない人が魅力的というわけでもありません。
例えば、一つのことに集中すると他が見えなくなってしまい、他のことがおろそかになったり、忘れたり、抜けてしまうという方がいます。
スケジュールやタスク管理のやり方を学んで工夫することで多少改善はできますが、根っからマルチタスクが得意でそんなことに悩んだことすらないという人と比べたら、どう頑張ってもめちゃくちゃ得意にはなりません。
そのように人には得手不得手や人それぞれに違う特徴があり、すべてを平均的にしたり、すべての弱点を克服することはできません。ある点では優れている方でも、必ず何かしらの弱点があり、すべてにおいて完璧ということはないのです。
ですから、弱みを認識して、周囲の人に協力を仰いで補ってもらったり、その分自分も相手の弱みにも寛容になって、自分が得意なところで助け合おうという考え方の方が建設的でしょう。
成長は大切ですが、それは目的ではありません。大事なのは、幸せに生きることです。弱みを克服しなければ!という想いに捉われて、重箱の隅をつつくように自己否定を続けて自分を痛めつけてしまうのは本末転倒です。
弱みやダメなところを克服することよりも、弱さやダメなところを認識し、受け入れたうえで、自分が望む、進むべき道を進むことの方が大事ではないでしょうか。
また、自己肯定が高い/低いという指標は人と比較してではなく、自分の中での高いとき/低いときと捉えましょう。
「ありのままの自分をどれだけ認めているか」というのは、そもそも人と比較できるような指標ではありません。
例えば「あなたはありのままの自分を受け入れていますか?」という質問に「はい」と答えた人が自己肯定感が高いというような単純なことではないからです。
その質問に「はい」と答える人は本当に自己肯定感が高いのかもしれないし、もしくは、本当は心の中で自己否定の嵐が巻き起こっているのに、「自己否定してはいけない。自分を好きにならなくてはならない」と思い込んでいたり、「ここは自分を受け入れていると言っておかなければ恥ずかしい」と思っていたりして、「はい。もちろん受け入れてます!」と口先だけで答えているだけかもしれません。
ですから、自己肯定感というのは数値で高い/低いが出るようなものではありませんし、人と比べても意味がありません。
しかし、自分の中での高いとき/低いときを捉えることは役に立ちます。
例えば、私のクライアントでも「過去の自分と比べて、ずいぶん自己肯定感が高くなった」とおっしゃる方は多くいらっしゃいます。
そんな風に「過去の自分と比べて、今の自分の方がありのままの自分を理解できて、それを受け入れている。成長した」と振り返ることは、進んでいる方向が間違っていないという確認になり、自信につながります。
また、自己肯定感は一度高めたら終わりというものではありません。日々の生活の中で高くなったり低くなったりするものです。体調が日によって異なるように、自己肯定感も状況や心の状態に応じて変化します。
例えば、仕事で大きなミスをしたときや、一生懸命取り組んでいるのにうまくかみ合わず成果につながらないとき、あるいは、自分の不用意な言動で誰かを傷つけてしまったときなどには、なかなか「ありのままの自分でいい」と思えないのではないでしょうか。
「こうすればよかった」と後悔したり、自分の至らなさや能力不足にがっかりしたり、落ち込むことは普通の感情ですし、むしろ成長のためには必要な感情です。
このように一時的に「ありのままの自分でいい」と思えなくなることは自然なことであり、それに対して焦ったり、不安に感じたりする必要はありません。
自己肯定感を高めるために必要なのは、そのような状況の時に、自分の至らなかったところや能力不足は素直に受け入れたうえで、次の行動に向けて切り替えていくことです。
「あの時できなかったのは自分の能力不足なんだから、それは仕方ない。『あれができてたら』『もっとこんなふうにしていたら』と、タラレバを言っていくら後悔したところで出来なかったのは事実なんだからそれはもう取り返せない」と事実を受け入れることで、それ以上グルグル思考に陥ることなく、今からできることを精一杯していこうと今後の対策を考える方向に切り替えていけます。
そこで自分の至らなさや能力不足にきちんと直面して、真剣に悩んだ体験が成長の糧になります。
ですから、「ありのままの自分でいい」と思えない日があるのは全く問題ありません。
問題なのは、自己肯定感が低い状態がずっと続いてしまうことです。
例えば一つのミスで「こんなミスをしてしまったから、もう自分はダメだ」と人生丸ごと、あるいは自分の将来丸ごと全否定してしまうと、自己否定を続けるだけで、今後の対策を考える方向に切り替えられません。
「あの時こうしていれば」と、できなかった事実を認めずに反省や自責を繰り返しても、「できなかった」という事実を受け入れることができていませんから、できるようにはなりません。
また、自己肯定感の低い方のもう一つのパターンとして、自責ではなく他責になることもあります。
例えば、自分がミスをしたという事実を認めて、素直に謝って再発防止策を考えれば済むような状況でも、自分がミスをしたという事実を受け入れられないから「あの人のせいでミスしてしまったんだ」と他責したり、「他の人の方がもっとミスをしている」と問題をすり替えようとしたり、誰に責められているわけでもないのにクドクドと延々言い訳を続ける方は、このようなパターンです。
こういう方は一見自信があるように見えるかもしれませんが、実は自己肯定感が低すぎて、ミスをした自分を受け入れられていないということが多いものです。
このように自己肯定感は変わらない絶対的な指標ではなく日によっても状況によっても、高くなったり低くなったり変わっていくものです。
そのような変化も含めて気づき、受け入れていきましょう。
「自己肯定感が高い人は悩まない。いつもポジティブ!」というようなイメージは間違いです。
どんな人でも悩みます。
ただそれを「成長のために必要なことだ」と建設的に悩んでいる人と、ただただ自己否定や自責を繰り返して落ち込むだけになったり、他責や責任転嫁、言い訳にエネルギーを割いている人との違いです。
「悩まない人にならなければいけない」というような非現実的な精神論で空回りや逆効果になってしまうこともあるので、気をつけて下さい。
今、自分のことが好きになれない、自分が嫌いだと悩んでいる方が自己肯定感を高めるためには、無理に自分を好きになろうとせず、「今は自分のことを好きになれない」という感情も含め、現在の自分を正直に、ありのまま認識することからはじめていきましょう。
自己肯定感を高めるためには、無理に自分を好きになろうとするのではなく、まずは自分の感情や弱点をありのままに認めることが大切です。
人間には完璧でない部分があり、それを否定するのではなく受け入れることで、自己肯定感は徐々に向上します。
また、自己肯定感は状況によって変動するものであり、常に高い状態を保つ必要はありません。
重要なのは、悩まない人になることではなく、悩みを建設的に考え、成長や幸せにつなげていくことです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
常光瑞穂
人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。臨床心理士。
京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。
弊社では、ビジネスパーソンが幸せに成果を出すための心理学コンテンツを企業研修・個人コンサルにてご提供しております。
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