2024年1月1日に石川県能登半島を中心に大きな地震が発生しました。

被害にあわれた方々には心からお見舞い申し上げます。

また、被災されていない方の中にも、ニュース映像を見たり、被害にあわれた方の状況を知り、心を痛め、つらい気持ちになっている人もいらっしゃるでしょう。

今回のような大きな災害が起こると、直接被害にあっていない人も、心に影響やダメージを受けることがよくあります。

東日本大震災の時にも、被災地から遠く離れた人にも「うつ」になる方がいらっしゃいました。

この記事では、被災していない人にも起こる災害による心の影響と、被災した方のためにできる支援について、心理職の立場で解説します。

災害時に起こる心理状況を理解し、少しでも心の平穏を取り戻す助けになれば幸いです。

動画でのご視聴はこちらから

筆者の状況

私は石川県出身で、親と妹夫婦が能登に住んでいます。

今回の地震で親や妹夫婦の家では物はたくさん壊れたようですが、幸いにも全員ケガ無く、無事が確認できました。

しかしまだ余震が続いていて、「揺れだけではなくゴーっという地鳴りもして恐ろしい」と両親は話していました。

まだまだ大きな余震が来るかもしれないから、いつでも逃げれるように気を付けながら生活している状態なので、きっと熟睡はできていないでしょう。

私自身は大阪に住んでいますので、何も被害や影響を受けていません。

しかし、被災された地域の映像をニュースで見て、輪島や珠洲、七尾など、子どものころから何度も訪れたことのある地域が一夜にして変わり果てた姿になってしまった映像には、言葉もありません。

被災していなくても起こる
サバイバーズギルト

災害や戦争などで多くの人が被害や影響を受けている時に、自分はたいした被害を受けなかったとしても、手放しでは喜べない気持ちや罪悪感を覚えることがあります。

それがサバイバーズギルト(生き残った人の罪悪感)と呼ばれる感情です。

特に今回の地震は1月1日、元旦に起こりました。

本来なら「おめでとうございます」と挨拶し、新年を祝っているはずのおめでたい日です。

例年、年始には「あけましておめでとう」と挨拶をするけど、今年は「おめでとうとは言いにくいね」と挨拶をした方も多かったのではないでしょうか。

本来なら楽しいはずのお正月のイベントやテレビ番組も、「楽しんでいいのかな?こんなことしてていいのかな?」と複雑な気持ちで過ごした方もいらっしゃるでしょう。

大きな災害が起こると、実際に被災していなくても、このように心に影響を受けるのです。

また、被災した方の中にも「亡くなった人もいるのに自分は被害が少なくて申し訳ない」と、サバイバーズギルトを感じる人もいます。

つらくなったら災害のニュースから離れる

もし、災害のニュースを見ていてしんどくなったら、いったんテレビやSNSから離れて距離をとるようにしてください。

東日本大震災の時にも、津波の映像を見るだけでしんどくなった方が多くいらっしゃいました。

実際に被災していなくても、映像を見るだけでもそれだけ心の負担があります。

正しい情報を知ることは大事ですが、被害を受けていない人までつらくなったり、自粛ムードでシュンとしたところで、被災された方が救われるわけではありません。

被害にあっていない人は普段通り生活や経済活動をして、健康で楽しく暮らすことがとても大事です。

元気でいるからこそ、被災地の人を支援することもできます。

ですから、普段通りの日常を楽しむことに罪悪感を感じる必要は全くありません。

自分にできる範囲で支援をすればOK

そのうえでできる範囲で支援をすればいいでしょう。

経済的に余裕があれば寄付をすることもよいでしょう。自分にできる範囲で、無理なくで大丈夫です。

被災した方に声をかけることが支援になる

また、被災した知り合いの方がいらっしゃるなら、声をかけてあげることが支援になります。

私も石川県出身なので、「ご実家大丈夫ですか?」と声をかけてくださった方もいらっしゃいました。

そんな風に覚えていて声をかけて下さることが、本当にありがたいなと思いました。

被災地ではインフラや道路の復旧など、日常を取り戻すにはまだまだかなりの時間がかかると思います。

今はまだ気をはっていてお元気な方や「亡くなった方に比べたら、命があるだけでありがたい」とつらい思い気持ちをあまりおっしゃらない方でも、きっと熟睡できていませんし、だんだん疲れがたまってきます。

周りの方は「元気そうだし、大丈夫そう」と安心しすぎずに、「その後どう?」「寝れてる?」とか声をかけ続けて、様子を気にかけることが支援になります。

また、声をかけるときに「何と言ってあげたらいいのか」と悩む方もいらっしゃるでしょう。

気の利いたことを言う必要もなければ、無理に元気づけようとする必要もありません。

そもそも元気でいられるわけがない状況ですから、ただ気にかけていることが伝わればいいのです。

「つらいよね」と共感するだけで大丈夫です。

アドバイスなどはかえって相手の負担になることもありますから。

メッセージやLINEを送っても、相手も忙しかったり気分が乗らなかったりして返信がないこともあるでしょう。

返信がなくても「大丈夫か?」と心配しすぎたり、鬼のように連続で着信やメッセージを入れると怖いです。

「今は返信できない状況なんだな」と理解してあまり気にせず、ちょっと時間を空けて、また連絡してみるといいでしょう。

そもそも一度連絡して気が晴れるなんてことはありません。

つかず離れず短いやり取りを続けて「気にして続けているよ」と伝えていくことが支援になります。

それぞれにできる範囲で、できることをしていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人

常光瑞穂

人と組織のWin-Winで幸せな成長を支援する心理コンサルタント。国家資格キャリアコンサルタント。臨床心理士。

京都大学大学院工学研究科修了後、子どものころから憧れたエンジニアとなるが当時の長時間労働の働き方が合わず1年余りで退職。自身のキャリアが見えなくなったことを機に京都大学、立命館大学大学院にて心理学を学ぶ。2003年開業。修士(人間科学、工学)。